オニヒトデの毒(その2)
今回は、稚ヒトデモニタリングトレーニングコースを受講して頂いた受講生の方からの質問に答える形式で、コラムを進めて行きたいと思います。主題は、前回に引き続き「オニヒトデの毒について」です。
Q1:海水なら海中に毒素生成の要素があるから、毒素が食物連鎖などにより生成されるだろうが養殖でも毒は作られるのでしょうか?
A1:おそらく、オニヒトデの毒の由来に関する質問と思います。フグ毒で知られるテトロドトキシンは、もともと藻類が生産する毒で、食物連鎖によって最終的にフグに蓄積します。よって食物連鎖のない養殖フグは、毒化しません。一方、オニヒトデのタンパク毒や、サポニンは、おそらくオニヒトデ自身で産生する毒なので、オニヒトデを養殖しても、毒性は作られると思います。
Q2:それはどこの器官組織でつくられるのでしょうか?
A2:毒のカテゴリーや種類によって違いますが(コラム「オニヒトデの毒」を読んで下さい)、タンパク毒の1種であるPLA2は、マスト細胞と推定されています1)。その他の毒に関しては、私の不勉強でわかりません。
Q3:海中の?何の成分と、体内の何が結合して毒素が生成されるのでしょうか?
A3:タンパク毒の場合、オニヒトデの体内のアミノ酸同士が反応し(脱水縮合)連結します(生合成)。その出発原料はアミノ酸であり、サンゴモやサンゴを胃酸で溶かして吸収します。次に、サポニンの場合です。サポニンのステロイドや糖も、おそらく自身で合成していると思います。ステロイドの出発原料は、人の場合、メバロン酸から合成しています2)。オニヒトデもおそらく同様と思います。糖は植物であるサンゴモに大量に含まれます。また、サンゴ粘液も多糖成分(糖が連なった化学構造)なので、サンゴを捕食する時に吸収されていると思います。
Q4:養殖の場合、その器官を取り除くことは可能なのか?
A4:産生器官や貯蔵器官が特定されていれば可能かもしれませんね。ただ毒の種類を見る限り、棘の毒嚢を取り除けば無毒化するといった単純な話ではなさそうです。
Q5:または、その毒素生成を妨げる要素を捕食させれば、毒素は生成されないのでしょうか?
Q5:質問の意味が、「オニヒトデの毒であるタンパク毒やサポニンの合成を、オニヒトデの体内で抑制する物質をオニヒトデに与えれば」という意味なら、毒素は生成されないと思います。
Q6:海水が弱アルカリから海洋酸性化が進んでいるとすると、繁殖率はどうなのでしょうか?増えるのか、減るのか?
A6:海水のpHを下げるとオニヒトデの精子の鞭毛運動や受精率の低下が報告されており3)、海洋酸性化が進むとオニヒトデの繁殖は低下すると思います。
北村誠
1) 塩見一雄(2003)オニヒトデ刺棘のタンパク毒, Nippon Suisan Gakkaishi, 69, 831-832.
2) 海老塚豊 (2004), 医薬品天然物化学, 南江堂,167-288,
3) Uthicke S, et. al. (2013) Impacts of ocean acidification on early life-History stages and settlement of the coral-eating sea star Acanthaster planci, PLOS ONE, 8, e82938.